最近中国では、カナダのTim Hortonsやお馴染みのスターバックス、イギリスのCosta coffeeといった外資系のコーヒーチェーンが続々進出してきて、コーヒーを日常的に飲む若い人が増えてきています。
平均年齢が25才の筆者の働くオフィスでも、朝からコーヒーを飲むスタッフが多くいます。中国の街では、大都市に限らず中国全土でスターバックスが至る所にあり、店舗数も拡大しています。
そんな外資系大手の競合ブランドが犇めく中国のコーヒー市場ですが、国内ブランドで設立3年でSNSで人気になり、スペシャルティーインスタントコーヒーという新カテゴリーを生みだして話題になった「Saturnbird Coffee(三顿半咖啡)」という中国ブランドが気になったので、人気の秘密を調査してみました。また、こちらのブランドは中国のスーパーなどでも購入できるので、お土産としても最適です。
中国のコーヒー市場について
コーヒー市場は大きく、インスタントコーヒーと挽きたてコーヒーのふたつに分かれます。
挽きたてのコーヒーとインスタントコーヒーを比べると、世界では挽きたてコーヒーの売り上げ規模が高いのに対して、中国では、インスタントコーヒーが市場を8割以上を占めており、インスタントコーヒーが売れているのがわかります。
コーヒー市場全体でいうと、毎年右肩上がりに成長しており、EqualOceanの調査によると、2019年には700億元に達しました。CBN Dataによると、2025年までに1 兆元の市場規模に達するとされています。
また、中国のコーヒー市場の特徴として、インスタントコーヒーは平均1元で飲む事ができますが、品質が良くなく、挽きたてコーヒーは、平均価格が30元とふたつのカテゴリーの価格のギャップが大きいというが中国のコーヒー市場の特徴でした。
そこのギャップにビジネスチャンスと見たのが、「Saturnbird Coffee」でした。
「Saturnbird Coffee(三顿半咖啡)」ブランド概要
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」は2015に中国の、湖南省の长沙市で設立されました。2018年に有名になり、売り上げは3千万元に達しました。
そして2019年のシングルデー(ダブルイレブン)では、アリババのECプラットフォーム天猫上で2018年の10倍の売上を記録し、それまでカテゴリーで1位だった、ネスレを超えてコーヒーカテゴリーで1位に輝きました。
さらにすごいのは、その時店舗が開店してから、たった3ヶ月しか経っていなかったというから驚きです。
月額のGMVは5,600万元に達しており、一番人気なのは、インスタントコールドブルーで、夏に特に爆発的に売れ、ブランドのヒット商品に成長しました。ブランドのリピート率は60%とリピーターが多いのもブランドの大きな特徴です。
Saturnbird Coffee
HP | Instagram
天猫店舗はこちら
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」成功の秘密
1. SNS映えする可愛いパッケージング
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」の大きな魅力のひとつが可愛らしくおしゃれなパッケージングです。
パッケージの色はレゴのようなカラーパレットを採用し、ポップな色使いで、SNSで映える仕様になっており、若い人たちの間でたちまち注目を浴びました。小さいコーヒーカップの形をした入れ物の中にコーヒーパウダーが入っているデザインで、使い終わったらそのまま捨てるのにはもったいないくらいに可愛いパッケージングが魅力的。
そのため、使い終わったら、タネを植えたり、指輪などのアクセサリーにしたり、ついつい再利用したくなるようなデザインの工夫がされています。そして再利用したアイディアなどもついつい投稿したくなっちゃいます。
2. SNSを利用したマーケティング
今や中国で人気なサービスになるのに必須なのがSNSの活用。「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」は、このSNSをうまく利用して成功したブランドの一つです。
何を行ったかというと、中国で一番人気なクッキングアプリ「下厨房」で、ユーザーに無料でサンプルを配布し、「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」を使ったレシピを投稿してもらいUGCを増やすことで地名度を爆発的にアップさせることに成功したのです。
それだけではなく、同時にそのユーザーからフィードバックをもらってユーザーの声を即時に商品開発へと反映させたのです。
3.KOCの発掘
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」は、利用している既存ユーザーではなく、潜在顧客になりそうなユーザーを、中国のZ世代に人気なSNS小红书(Red)やWeiboといったSNS上で積極的に発掘する事に力を入れました。
コーヒに関する記事を探し、そこからターゲット層になりそうなKOCを発掘し、そのKOCにコンタクトを取り、サンプルを送りフィードバックをもらいます。彼らはナビゲーターと呼ばれ、SNSでのブランド認知度アップに貢献しています。
彼らに商品を使用してもらい、同じようなフィードバックがあれば、そこから商品改良に生かすこもできます。今ではナビゲーターと呼ばれるKOCが500人以上もいると言われています。
4. 環境に優しいブランドとしての「Saturnbird Coffee」
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」はリサイクルにも積極的に取り組んでいます。
使用されているカップはリサイクルできる素材で作られ、中国のローカルコーヒーブランドArabica%やo.p.s café 、metal hands. と手を組み「回収プロジェクト」を実施し、消費者から使用済みのカプセルを回収しています。
回収スポットが中国の各都市に設けられており、そこで消費者から使用済みのカプセルを回収するとともに、消費者とのタッチポイントも生みだしているのがポイントです。
消費者はリサイクルする事でコーヒーと交換でき、2日で、770kの空のボックスを集められたというほどの高い回収率を誇っています。結果、ブランドの認知だけでなく、消費者の環境意識向上にも貢献しています。
5. 「スペシャルティーインスタントコーヒー」という新しいサブカテゴリーを創出
「Saturnbird Coffee(三顿半咖啡)」が人気になるまで、インスタントコーヒーと言えば、中国ではネスレが有名で市場のシェアも高く、レッドオーシャンの市場で新しいブランドが入る余地はありませんでした。
しかしブランド自身は、インスタントコーヒーとは呼んでおらず、「スペシャルティーインスタントコーヒー」と呼び、競合と差別化を図りました。レッドオーシャンなインスタントコーヒーカテゴリーの中かから新しい、スペシャルティーインスタントコーヒーというブルオーシャンの市場を生みだし、潜在的な需要を引き出すことに成功したのです。
6. 3秒で本格的な挽きたてコーヒーを実現
「インスタントスペシャルティーコーヒー」の魅力は何と言っても水、お湯、ミルクに3秒という速攻で溶かすことができる利便性です。
とにかく早く本格的なコーヒーを飲みたいという、利便性を重視しながら、味も維持したいと思っているコーヒー好きな人の需要に答えているのです。これは特にオフィスなどで働く忙しいビジネスマン達の間で支持されたのです。
7. 挽きたてのコーヒーの風味を保つ特許技術
「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」の人気の秘密、「挽きたてのコーヒーの風味と香りを閉じ込めつつ、3秒で水に溶ける」というのを可能にしているのは、ブランドが特許を取得している「ゼロロス」テクノロジーのおかげ。この技術は、冷抽出と優れた乾燥技術を採用し、これにより風味が挽きたてのコーヒーに大幅に近づき、製品ラインの6つのSKU間での風味や味わいの違いを明らかにさせています。
8. ユニークなアイテムの継続的な発売
Saturnbird Coffee(三顿半咖啡)は世界的に有名なバリスタとのコラボレーションした限定アイテムなどを定期的に発売し、ファンを飽きさせないよう商品の内容自体も工夫しています。結果カスタマーリテンションを維持し、LTV(ライフタイムバリューを)向上しています。これがリピート率にも繋がっており、同時に新規のユーザーの獲得にも成功しています。
9. 絶妙な価格戦略
Saturnbird Coffeeは現在主に3グラム8元で販売していますが、ネスカフェのパウダーコーヒーは約3グラム1元で販売しており、比べたら競合より断然高いです。ただ、本格的な挽きたてのコーヒーを飲もうとすると、中国では約35元します。そのギャップをSaturnbird Coffeeはビジネスチャンスと捉え、本格的な味のインスタントコーヒーを3グラム8元で販売することで、本格的な味が簡単に楽しみたいという層の需要に声える事に成功しました。
また、2グラムの小さいカップも販売しており、こちらは4.5元と価格に敏感、または頻繁に飲むユーザーの需要にも答えています。
まとめ:「Saturnbird coffee(三顿半咖啡)」はイノベーションxテクノロジーで成功した、新興コーヒーブランド
このように最近の中国の消費者の傾向では、少し高いお金を出して、デザイン性や品質に対して要求が高くなっているのが今の中国市場の全体的な特徴だと言えます。Saturnbird Coffee(三顿半咖啡)はレッドオーシャンの中からブルーオーシャンを生みだしたイノベーションなアイディアと、特許を取得したテクノロジーの融合がもたらした成功だと言えます。
また、SNS映える事を想定した、魅力的なパッケージング戦略で、UGCを戦略的に生みだし、同時にユーザーとのインタラクティブな交流を積極的に生みだし、フィードバックを商品改良へと活かす事に成功しました。
このような戦略は、中国市場での勝ちパターンとして、日本のブランドも真似できる事があるのではないかと思います。