中国を代表する庶民グルメのひとつが「羊肉串(ヤンロウチュアン)」です。炭火で焼かれた串焼きの羊肉に、クミンや唐辛子をたっぷり振りかけたスパイシーな味わいは、中国全土で愛されています。日本でいう「焼き鳥」にあたる存在で、夜市や屋台、さらには大手チェーン店でも楽しめる国民的料理です。本記事では、羊肉串の歴史や特徴、中国の串焼き文化、そして有名チェーンについて紹介します。
羊肉串とは?
羊肉串は、新疆ウイグル自治区にルーツを持つ串焼き料理です。小さく切った羊肉を金属や竹の串に刺し、炭火で香ばしく焼き上げます。味付けはシンプルに塩・クミン・唐辛子を使い、ピリッとした刺激と独特の香りが食欲をそそります。現在では鶏肉、牛肉、野菜、豆腐皮なども串焼きの仲間として広まり、「烤串(カオチュアン/串焼き)」というジャンルとして親しまれています。
なぜ羊肉なのか?
中国の串焼き文化で羊肉が中心となった理由は、歴史的・文化的背景にあります。
- 遊牧文化との関わり:新疆やモンゴルをはじめとする遊牧民地域では、古くから羊が主要な家畜であり、日常的に食べられてきました。保存性や調理のしやすさから、羊肉は串焼きに最適でした。
- 宗教的要因:イスラム教徒が多い新疆地域では、宗教上の理由で豚肉が食べられず、羊肉や牛肉が主流でした。その中でも調理しやすく臭みをスパイスで抑えやすい羊肉が特に好まれました。
- 牛肉・鶏肉との違い:牛肉も串焼きに使われますが、価格がやや高く、羊肉ほど庶民的ではありません。鶏肉も普及していますが、中国では「羊肉=スタミナ食」というイメージが強く、滋養強壮や体を温める効能があると信じられているため、特に寒い地域で重宝されました。
このように、羊肉は単なる食材を超え、地域の生活習慣や宗教、健康観とも結びついた「串焼き文化の主役」となったのです。
どんな時に食べられるのか
羊肉串は単なる食事ではなく、中国人のライフスタイルや社交文化とも深く結びついています。
- 夜市や屋台での定番:夕方以降になると街角に屋台が並び、羊肉串は気軽に立ち寄れる「夜食」として人気。学生や若者が小腹を満たすのにぴったりです。
- 仕事帰りの一杯:会社帰りに同僚や友人と串焼き屋に立ち寄り、ビールと一緒に楽しむのはごく一般的な習慣。焼き鳥居酒屋に近い役割を果たしています。
- お祭りやイベント:地域のフェスティバルや旧正月の縁日などでも羊肉串はよく登場し、華やかな場を盛り上げる屋台グルメとして定着しています。日本のチャイナフェスティバルでも定番メニューで屋台では大きな行列を作っていました。
- 深夜食堂での締め:夜更けにラーメンを食べるように、中国では深夜に羊肉串を頬張る文化が根付いており、「夜食=羊肉串」と表現されることもあります。
こうした背景から、羊肉串は単なる料理を超えて「人と人をつなぐ食文化」として親しまれています。
日本の焼き鳥との違い
日本の焼き鳥は「タレ・塩」で素材の味を生かすのに対し、中国の羊肉串は「スパイス重視」。クミンの強烈な香りと唐辛子の辛味が特徴で、より刺激的で豪快な味わいです。また、日本は鶏肉中心ですが、中国では羊肉が主役で、牛や鶏、野菜も広く用いられます。屋台や夜市文化と結びついている点も大きな違いです。
中国の有名チェーン店
羊肉串は屋台だけでなく、全国展開するチェーンでも人気メニューとして提供されています。清潔感ある店舗と豊富なラインナップで、都市部の若者を中心に支持を集めています。
- 木屋烧烤(Muwu Barbecue):深圳発祥の大手焼き串チェーン。全国に100店舗以上を展開し、上海にも支店あり。清潔で入りやすい店舗スタイルが特徴。
- 耶里夏丽(Yelixiali):新疆料理チェーンの代表格。羊肉串をはじめとする新疆料理を提供し、上海や大都市圏に多数出店。
- 很久以前(Long Time Ago):北京発祥の串焼きチェーン。羊肉串を看板に、モダンな店舗と自動回転式グリルを導入して都市部で人気。
これらのブランドは、羊肉串を「庶民の屋台グルメ」から「レストランチェーンの定番料理」へと押し上げた存在とも言えます。
東京で楽しめる羊肉串のお店
日本でも中国式串焼きが楽しめるお店が増えてきました。特に池袋や上野は在日中国人が多く、本場の味に出会える場所です。
- 羊不同 烤小串(上野):ラム串を中心に多彩な串メニューを提供。自動ロースターで焼き上げるスタイルがユニーク。
- アリヤ 清真美食(池袋):清真(ハラール)対応の中華料理店。スパイスの効いた羊肉串が人気で、クセが少なく食べやすい。
- 羊肉串専門店(新大久保周辺):韓国料理街でも中国式串焼きが登場し、異国感あふれる食べ歩きが楽しめる。
今後はさらに専門店が増え、日本でも「羊肉串」が定番グルメになる日が来るかもしれません。
まとめ
羊肉串は、新疆発祥の庶民グルメから始まり、中国全土に広がった「国民的B級グルメ」です。夜市や屋台で気軽に味わえるだけでなく、大手チェーンや都市部の専門店でも楽しめるようになり、今や中国食文化を象徴する料理のひとつとなっています。日本でも池袋や上野を中心に羊肉串を提供する店が増えており、今後さらなる人気拡大が期待されます。




