概要
羊肉串(ヤンロウチュアン、拼音: yángròu chuàn) は、中国で広く食べられている串焼き料理。主に小さく切った羊肉を串に刺し、炭火で焼いたものを指す。新疆ウイグル自治区を発祥とし、現在では中国全土に普及している。塩、クミン、唐辛子を主体とした味付けが特徴で、日本の焼き鳥に相当する国民的庶民グルメとされる。
歴史と起源
羊肉串の起源は新疆ウイグル自治区の遊牧民文化に遡る。羊は遊牧民にとって主要な家畜であり、肉・乳・毛皮など生活の基盤を支える存在だった。羊肉を小さく切り、炭火で焼く調理法は保存性と携帯性に優れていたため、移動の多い遊牧生活に適していたと考えられる。
20世紀初頭には新疆から中国東北部へと伝わり、ハルビンや瀋陽の都市部で屋台料理として定着。その後、北京や上海といった大都市に普及し、都市文化の中でも「深夜の定番グルメ」として愛されるようになった。
なぜ羊肉なのか
羊肉が選ばれた背景にはいくつかの理由がある。
- 遊牧文化:新疆やモンゴルでは羊が主要な家畜であり、食肉として日常的に消費されていた。
- 宗教的要因:新疆にはイスラム教徒が多く、豚肉を食べないため、羊肉や牛肉が主流となった。
- 健康観:中国の伝統的な食文化では「羊肉は体を温める食材」とされ、特に寒冷地で重宝された。
- 経済性:牛肉よりも庶民的で手に入りやすく、鶏肉よりもスタミナ食としての価値が高かった。
これらの背景から、羊肉は串焼き文化の主役となった。
普及と文化的役割
羊肉串は庶民の食べ物として広がり、特に以下の場面で親しまれてきた。
- 夜市・屋台:夕方以降に屋台が並ぶ街角で定番の夜食。
- 労働者の食事:手軽で安価に腹を満たせる料理として都市労働者に支持された。
- 都市文化の一部:北京や上海では「夜食といえば羊肉串」と言われるほど、深夜食堂の定番に。
羊肉串は単なる食事を超え、人々の交流や都市の夜の風景を象徴する存在となった。
日本の焼き鳥との比較
羊肉串はしばしば「中国の焼き鳥」と呼ばれるが、以下の点で異なる。
- 素材:焼き鳥は鶏肉中心、羊肉串は羊肉中心。
- 味付け:焼き鳥はタレや塩が主流、羊肉串はクミン・唐辛子などスパイス重視。
- 食文化:焼き鳥は居酒屋文化に根ざす一方、羊肉串は夜市や屋台文化に結びついている。
現代の展開
21世紀以降、羊肉串は屋台に留まらず、全国チェーン店でも扱われるようになった。代表的なチェーンには以下がある。
- 木屋烧烤(Muwu Barbecue):深圳発祥の大手チェーン。全国に100店舗以上を展開。
- 耶里夏丽(Yelixiali):新疆料理チェーンの代表格で、都市部に多数出店。
- 很久以前(Long Time Ago):北京発祥の串焼きチェーン。モダンな店舗スタイルを採用し、若者に人気。
これらのブランドの登場により、羊肉串は「庶民の屋台料理」から「都市型レストランの定番料理」へと進化した。
まとめ
羊肉串は新疆に起源を持ち、中国全土に普及した国民的グルメである。宗教的背景や健康観に支えられ、庶民の生活に深く根ざし、都市文化にも取り込まれてきた。現在では屋台からチェーン店まで幅広い形で提供され、中国を代表する食文化のひとつとなっている。


