最近何かと話題にあがる中国。中国に住んでみると、日本では「マナーが悪い」と言われがちな中国人の行動が、実は悪意ではなく、文化や社会の仕組みに根ざした“自然なふるまい”であることが見えてきます。
私はこれまでに 台湾・ベトナム・中国で生活し、現地企業で働いた経験があります。
アジアのさまざまな国で日常を過ごし、現地の人たちと一緒に働き、
文化の違いが“行動の違い”としてどのように表れるのかを身をもって体験してきました。
その中でも、中国の「当たり前」が日本人の感覚と大きくズレる場面は特に多く、
前回の記事「日本の常識は中国で通じない?」で紹介したように、旅行者や在住者が驚くポイントがいくつも存在します。
今回はその続編として、なぜ中国人が日本で“マナーが悪い”と言われてしまうのか?
その裏側にある文化的背景を、在住経験者としての視点から解説したいと思います。よく日本で問題になる中国人の行動パターンを例に挙げて理由を説明します。
“批判”ではなく、“違いを理解する”ことで、見え方が大きく変わるはずです。
- 1. 横入りするのはなぜ?一人っ子政策と誰も注意しない社会構造
- 2. 食べ方が汚いと言われる理由:食卓は“静寂”より“勢いとシェア”が大事
- 3. 喋り方がうるさいのはなぜ?声の大きさ=誠実さ・親しみやすさ
- 4. 公共の場でうるさくするのはなぜ?“公共=静かにする場所”という概念が薄い
- 5. なぜ洋式トイレに靴で上がるのか?和式文化の名残+衛生観念の差
- 6. 他のお店で買ったものを店内で食べるのはなぜ?空間を貸し借りする感覚
- 7. 民泊で部屋を汚く使ってしまう理由:“掃除はスタッフの仕事”という価値観
- 8. 民泊トラブルが起こりやすいワケ:民泊のルール認識の違い
- まとめ:だから中国人は日本でも同じことをし、摩擦が生まれる
1. 横入りするのはなぜ?一人っ子政策と誰も注意しない社会構造
在住してまず気づくのが、中国では注意されない文化が圧倒的だということ。
周りの目を気にする日本とは対照的で、中国では「他人は他人、自分は自分」という距離感が強く、何かしても誰も咎めません。
日本のスーパーで、親がすぐそばにいるのに子どもが大声で騒ぎ、店員さんに注意されている中国人親子を見たことがあります。中国ではこうした場面でも注意されないのが普通で、子どもも親も“ダメな行為”だと認識しないまま育ちます。
だから横入りも、「やっても怒られない」→「自然にやる」という流れが出来上がっているだけなのです。
そこに悪意はなく、日本で誤解されてしまう代表例と言えます。
また「誰も注意しない」という行動背景には、中国独自の家族構造の歴史も深く関係しています。
中国では長年続いた 一人っ子政策(1979〜2015) の影響で、多くの家庭で「一人の子どもを家族全員で育てる」という状況が当たり前になりました。
結果として
- 両親
- 祖父母
- 時には曾祖父母
から 6人以上の大人が1人の子どもに全力で愛情を注ぐ という構造が生まれました。
この環境では、子どもが少々騒いでも、少しワガママを言っても、何か失敗しても、
誰かが代わりにやってくれたり、許してくれたりする ことが多くなり、子どもが「注意されて矯正される」経験は極端に少なくなりました。
特に都市部では、家庭内で叱られない → 公共の場でも叱られない → 周りの大人も注意しないという連鎖が強く表れやすくなります。
中国人が公共の場で騒いでしまう、並ばずに割り込んでしまう、子どもが走り回っても親が止めない、
こうした行動の裏には、「子どもは自由でいい」「止める必要はない」という長年の家庭文化が深く影響しているのです。
そして当然ながら、この“注意しない価値観”は大人になってもそのまま残ります。
これにより、日本へ来たときにも 同じ行動パターンが無意識に出てしまう のです。
2. 食べ方が汚いと言われる理由:食卓は“静寂”より“勢いとシェア”が大事

中国の食卓は大皿をシェアするのが基本で、取り箸ではなく自分の箸で取るのが普通。
ローカル食堂では、魚の骨や海老の殻、唐辛子などをテーブルの端に直接置くこともよくあります。
これはマナーの問題ではなく、「みんなでワイワイ食べる」ことが最優先だから。
日本のように“静かに丁寧に食べる”文化ではないため、落ち着いて食べたい旅行者は驚くことがあります。
3. 喋り方がうるさいのはなぜ?声の大きさ=誠実さ・親しみやすさ
中国では、声が大きい人は
「元気」「正直」「親しみがある」
とポジティブに受け止められます。
静かに話すと、「暗い」「怒っているの?」と逆に心配されることも。
そのため、公共の場でも会話のボリュームを落とす意識が生まれにくいのです。
日本人が聞くとケンカしているように聞こえる会話も、実は普通に仲が良いだけだったりします。
4. 公共の場でうるさくするのはなぜ?“公共=静かにする場所”という概念が薄い
横入りと同じく、ここでも大きいのは注意されない社会の存在。
中国では、
- 公共空間は“みんなで共有する場所”であり
- “静かにしなければならない場所”という認識が弱い
そのため、
・スマホ動画の音がそのまま流れる
・集団でワイワイ盛り上がる
・電車やバスで大声通話
といった行動もよく見られます。周囲の目を気にしない文化があるため、静寂よりも“にぎわい”が自然な状態なのです。
5. なぜ洋式トイレに靴で上がるのか?和式文化の名残+衛生観念の差
よく、日本のトイレの注意看板に洋式トイレで立つのは禁止というのをみたことがある人もいるのではないでしょうか。中国では長年和式(しゃがむ式)が主流で、「座る=汚い」「便座に触れたくない」という感覚が今も強く残っています。
そのため、洋式トイレを見ると「しゃがむために靴で乗る」という行動が無意識に出ます。最近では少なくなったようですが、少し前は割と普通でした。私も中国の洋式トイレに行った際、誰かが靴で上がった後があった場面が多くありました。
これも単純に“マナー違反”ではなく、衛生観念と慣れの違いと言えます。
6. 他のお店で買ったものを店内で食べるのはなぜ?空間を貸し借りする感覚
中国のショッピングモールやカフェでは、
「場所を使う=自由に過ごしていい」
という感覚が強く、持ち込み禁止文化が日本ほど発達していません。
たとえば、スタバで別ブランドのケーキを食べても誰も何も言わないことも普通。
店側も“にぎわう方が良い”と考えるため問題になりにくいのです。
7. 民泊で部屋を汚く使ってしまう理由:“掃除はスタッフの仕事”という価値観
ここにも「注意されない文化」と「掃除担当の存在」が深く関わっています。
在住して驚いたのが、中国のショッピングモールやオフィスビルのトイレには、
いつも“掃除のおばちゃん(阿姨)”が常駐していること。

- ゴミを片付ける
- 床を拭く
- トイレットペーパーを補充
などを常に行っており、「汚れたらすぐ誰かが掃除する社会」 が出来上がっています。
ちなみに、この“掃除のおばちゃん(阿姨)”、中国の日本式の温泉にも常駐していて、全然ゆったりできなかった経験があります。“高級な日本式温泉”だからだとは思いますが、入浴中も常に見られている感じがして居心地悪かったです。中国で温泉へ行く際は覚悟を。
そのため、住民の意識としては「自分が片付ける必要はない」という感覚が自然に育ちます。
これがホテルや民泊でも現れ、片付けずに退室する行動につながるのです。
8. 民泊トラブルが起こりやすいワケ:民泊のルール認識の違い
中国で民泊やホテルを借りるときは、“1部屋いくら”が基本で、そこに何人入ってもいいという感覚が一般的です。
そのため、日本のように「1人ごとの追加料金」や「定員厳守」のルールには馴染みがなく、部屋を借りている以上、自由に使っていいものだと考えがちです。この認識の違いが、民泊での人数超過や部屋の使い方のズレにつながります。
まとめ:だから中国人は日本でも同じことをし、摩擦が生まれる

ここまで見てきた行動のほとんどは、文化的な常識の違いと社会的背景が原因だと言えるでしょう。
日本では、
- 周りの目を気にする
- 見られていると思うから行動を控える
- 注意される可能性がある
という 強い“同調圧力”が行儀を形作っています。
しかし中国では、
- 周りの人の視線をほとんど気にしない
- 自分の行動に「他人がどう思うか」を重ねない
- 子どもの頃からあまり注意されない
- 注意することが“面倒ごとになる”ので周囲も言わない
という文化があります。このような、中国の「誰も注意しない社会」根本的な原因ではないのかと思います。
しかしこれは、行動の良し悪しではなく“文化のデフォルト値の違い”にすぎません。
文化背景を理解すると、見え方は大きく変わります。私たちが相手の文化を少し理解しようとするだけで、摩擦は驚くほど減ります。
旅行でも同じ。
「なんでこうするの?」とイライラしていた場面も、
意味がわかった瞬間、ストレスは驚くほど軽くなり、旅はもっと楽しくなる。
文化の違いは、距離を作るものではなく、世界を見る角度を広げてくれる“旅の面白さ”そのもの。
相手を知ろうとする気持ちがあれば、日本と中国の間にある“見えない壁”は自然に低くなり、
その先には、もっと深くて豊かなアジアの世界が広がっています。




