近年、中国のローカルブランドを見ていると、以前のような「分かりやすい中国らしさ」とは異なる空気感をまとったデザインが増えていることに気づきます。
漢字や赤、伝統モチーフを前面に押し出すのではなく、どこか静かで、説明されすぎない。それでも確かに“東洋的”と感じさせる佇まい。
この変化を言語化するキーワードとして、近年よく使われるのが「東方美学」です。本記事では、この東方美学がどのように現代ブランドへ取り入れられ、どの分野へ広がっているのかを整理していきます。
東方美学とは

ここで言う東方美学とは、伝統文化を忠実に再現することではありません。
むしろ特徴的なのは、主張を抑え、余白を残し、生活の中に自然に溶け込ませる姿勢です。
・静けさ
・余白
・控えめな美しさ
・使う人の感覚に委ねる設計
こうした価値観は、中国の伝統思想や生活文化の中に長く存在してきましたが、近年それが「現代的なデザイン言語」として再編集され、プロダクトやブランド表現へ落とし込まれています。
※思想的背景や歴史については、別記事で詳しく扱います。
東方美学を取り入れたブランドの共通点
ジャンルは違っても、東方美学を感じさせるブランドには共通点があります。
まず、「説明しすぎない」こと。
中国文化を前面に掲げるのではなく、使う側が自然に感じ取る前提で設計されています。
次に、「生活との距離が近い」こと。
鑑賞用ではなく、日常の中で使われ、時間とともに馴染んでいくことが重視されています。
そして、「デザインの強度を抑えている」こと。
派手さや視覚的インパクトよりも、全体のバランスや空気感が優先されます。
👇東方美学についての詳細はこちらの記事に書いてます
東方美学を取り入れたブランド
香り・ライフスタイル
観夏(GUANXIA)

中国の自然や風景、季節の移ろいを香りで表現するフレグランスブランド。
青磁を思わせるパッケージや余白を生かしたデザインは非常にミニマルで、「中国らしさ」を説明しない点が特徴です。香りそのものも主張が強すぎず、日常の空間に静かに溶け込む設計。東方美学が“感覚”として表現された代表例と言えます。
公式サイト:https://www.instagram.com/tosummerofficial/
闻献(DOCUMENTS)
禅や哲学的概念を背景に持つ前衛的な香りのブランド。
構造的で実験的な香りづくりと、アート性の高いビジュアルが特徴で、伝統と現代思想の間を行き来するような存在。東方美学をより抽象的・思想的に解釈したアプローチが見られます。
公式サイト:https://www.instagram.com/documentsperfume/
コスメ・ビューティー
花西子(Florasis)

中国伝統文化や工芸美を参照しながらも、近年はより洗練された方向へ進化。
装飾性は残しつつも、全体のトーンは穏やかで、肌や所作の美しさを引き立てる設計が特徴です。東方美学を「女性の身体感覚」へ落とし込んだブランドと言えます。日本にも進出しており、銀座SIXに実店舗があります。
公式サイト:https://jp.florasis.com/
东边野兽

中国草本文化をベースにしたスキンケアブランド。
強い赤を基調としたビジュアルが印象的ですが、その根底には自然観や生命力への敬意があります。東方美学の中でも、よりエネルギーや情緒を前面に出した表現が特徴です。
ジュエリー・アクセサリー
YIN隐

太極や月、気配といった抽象的な概念を、極めてミニマルなジュエリーとして表現。
幾何学的で理性的なデザインは、装飾性よりも内面的な意味合いを重視しています。東方美学の「静」と「余白」を象徴するブランドです。
公式サイト:https://yin.gold/
软山
少数民族文化や自然素材を現代的に再解釈したアクセサリーブランド。
物語性を持ちながらも過度に語らず、身につける人の背景に溶け込む設計が特徴です。
公式サイト:https://www.ontimeshow.com/zh-hans/node/9550
家具・インテリア・生活雑貨
梵几(FNJI)

木や布、陶といった素材の質感を生かした新中式家具ブランド。
自然体で実用的、それでいて詩的な佇まいがあり、日本で言う無印良品に近い思想性も感じられます。東方美学が「暮らしの道具」として最も分かりやすく表れている例です。
观园吉

竹や自然素材を軸に、東方的な精神性を丁寧にプロダクトへ反映。
視覚的な派手さよりも、使い心地や空間との調和を重視しています。
食・酒・カルチャー
梅见

中国伝統の梅酒文化を、現代の生活シーンに合わせて再設計。
書や余白を活かしたラベルデザインは、飲む行為そのものを静かな体験へと変えています。
ファッション
ZHUCHONGYUN

民族衣装や伝統要素を、現代的なシルエットへ昇華したファッションブランド。
装飾性は抑えつつ、素材感や構造で東方的な美意識を表現しています。
公式サイト:https://www.instagram.com/zhuchongyun/?hl=en
まとめ
東方美学を取り入れたブランドは、特定のジャンルに限定されたものではありません。
香り、コスメ、家具、食、ファッションと、生活のあらゆるレイヤーへ静かに広がっています。
それは「中国らしさを見せる」ためではなく、
中国で生きる人々の感覚に自然に寄り添う結果として生まれているもの。
中国ブランドを見る際の新しい軸として、
この「東方美学」という視点は、これからますます重要になっていくはずです。

