ホーチミンには数多くのベトナム料理店がありますが、「いまのベトナム料理」を体感できる店は意外と多くありません。
そんな中で、現地在住者や食通の間で必ず名前が挙がるのが Anan Saigon(アナン・サイゴン) です。
旧市街のマーケットというローカルな場所にありながら、ミシュランガイドで一つ星を獲得。
伝統的なベトナム料理を、モダンな感覚で再構築するスタイルは、観光向けのレストランとは一線を画しています。
私自身、実際にAnan Saigonを訪れてみて感じたのは、「ミシュランレストランなのに、思っていたよりずっと気取っていない」ということでした。
食事、空間、価格帯、そしてオーナーシェフの考え方まで含めて、ここは単なる高級店ではなく、
ベトナム料理の“今”を自然体で体験できる場所だと感じます。
この記事では、Anan Saigonの特徴や料理の魅力に加え、
実際に行ってみた感想、価格帯の相場感、予約時のポイントまで、現地目線でまとめていきます。
Anan Saigonとは?|ストリートフードから生まれたミシュランレストラン

Anan Saigonは、ベトナム系アメリカ人シェフ Peter Cuong Franklin(ピーター・クオン・フランクリン) によって2017年にオープンしました。

彼が掲げるコンセプトは明確です。
“Modern Vietnamese Cuisine”
ベトナムのストリートフードを、世界水準の料理へ。
フォー、バインミー、揚げ春巻きといった日常的な料理を、
調理技法・盛り付け・味の構成すべてにおいて再解釈し、
「懐かしさ」と「新しさ」を同時に感じさせる一皿へと昇華させています。
その姿勢が評価され、Anan Saigonは
ミシュランガイド・ホーチミンにて一つ星を獲得しました。
ロケーション|市場の中にある、特別な空間
Anan Saigonがあるのは、ホーチミン1区の Chợ Cũ(旧市場)エリア。
観光客向けの洗練された通りではなく、どちらかといえば雑多でローカルな雰囲気が残る場所です。
細い路地を進み、マーケットの建物の中に入ると、その中にぽつんと現れるのがAnan Saigon。
この立地そのものが、
「ベトナムの日常から生まれる料理」というメッセージを強く伝えています。
料理の特徴|伝統×モダン、そのバランス感覚

Anan Saigonの料理は、いわゆる“創作料理”という言葉では少し足りません。
・ベトナム料理の構造や味の記憶を尊重している
・ただ西洋化するのではなく、ベトナム的な輪郭を残している
・見た目は洗練されているが、味はきちんと「ベトナム」
このバランス感覚こそが、Anan Saigonの最大の魅力です。
メニューには、フォーやバインミーをモチーフにした料理、
発酵やハーブを活かした前菜、伝統的な調味料を再構築したソースなどが並びます。
初めて訪れる場合は、テイスティングコースを選ぶのがおすすめです。
Anan Saigonの世界観を、一連の流れとして体験できます。
予約・アクセス・基本情報・値段
Anan Saigonは人気店のため、事前予約が必須です。
特に週末や観光シーズンは、数日前〜1週間前の予約をおすすめします。
【店舗情報】
- 店名:Anan Saigon
- 住所:89 Ton That Dam Street, District 1, Ho Chi Minh City, Vietnam
- エリア:ホーチミン1区(旧市場エリア)
- ジャンル:モダン・ベトナム料理
- 公式サイト:https://anansaigon.com|Instagram
- 値段:ディナーのアラカルトは、一皿あたり 200,000〜400,000VND前後 が中心。
前菜・メインを数品シェアし、ドリンクを頼むと、1人あたり800,000〜1,200,000VND(約5,000〜7,500円)ほどが目安になります。
行ってみた感想|Anan Saigonは「ミシュランっぽくない」
実際にAnan Saigonを訪れて、まず印象に残ったのは、
いわゆる“ミシュランレストランらしさ”がほとんど感じられなかったことです。
建物は6階建ての一棟で、レストランで食事をしたあと、そのまま屋上のルーフトップバーへ上がれる造りになっています。
屋上からは、近代的な Bitexco Financial Tower と、眼下に広がるストリートマーケットが同時に見え、その新旧のコントラストがとても印象的でした。
このルーフトップバーがまた、いい意味で「気取っていない」。大音量の音楽や派手な演出はなく、BGMは程よい音量のラウンジミュージック。
会話を邪魔しない落ち着いた空気があり、いかにも“飲みに来るためのバー”というより、食事の余韻をそのまま楽しむ場所という感覚です。
オーナーシェフとの思いがけない会話
食事を終え、ルーフトップでゆっくりお酒を飲んでいたとき、思いがけない出来事がありました。
Anan Saigonのオーナー兼シェフである Peter Cuong Franklin 氏が、ふらっと声をかけてくれたのです。
驚きつつも、いろいろ質問してしまいましたが、終始とても気さく。
彼はベトナム・ダラット出身で、幼少期をアメリカで過ごし、その後ヨーロッパやアメリカで料理の経験を積んできたそうです。
そんな彼が繰り返し語っていたのが、
「ベトナム料理=安い」というイメージを変えたいという思いでした。
「New Vietnamese Cuisine」に込められた考え
メニューを見て気づくのは、
ピザやタコスなど、一見ベトナム料理とは結びつかない料理が多いことです。
ただし、使われている食材や調味料は徹底してローカル。
ハーブや発酵調味料など、ベトナム料理の要素が皿の上で自然に組み合わされており、
食後にはどこか「ベトナムらしさ」がきちんと残ります。
彼はこう話していました。
「ターゲットは特に決めていない。
自分が信じる料理を作っていれば、共感する人は自然と集まってくる。
だから広告もあまり使わない」
“New Vietnamese Cuisine” という言葉には、
伝統を壊すのではなく、次の段階へ更新していくという意志が込められているのだと感じました。
実際に行って感じたこと
正直に言えば、
「ミシュランだから特別」というよりも、
料理人の思想と距離の近さが印象に残るレストランでした。
おすすめは、いろいろな料理を少量ずつ楽しめるコースメニュー。
人気のピザやタコスを含むコースは、初めて訪れる人にも向いています。
食事そのものだけでなく、ルーフトップで過ごす時間や、オーナーとの会話まで含めて、
Anan Saigonは一つの“体験”として記憶に残る場所でした
料理は一皿ごとに工夫が感じられますが、
「難しい料理」という印象はありません。
フォーやバインミーといった馴染みのある要素がベースにあるので、
初めてでも構えずに楽しめます。
個人的に印象的だったのは、
“ベトナム料理を説明されている感じがしなかった”ことです。
伝統や文化を前面に押し出すのではなく、
ただ目の前の料理として自然に成立している。
ルーフトップバー|食後に訪れたいもう一つの顔
食事を終えてルーフトップバーに上がると、ホーチミンの夜景とともに一気に空気が切り替わります。食事からバーまでが一本の体験としてつながっている点は、
実際に行ってみて初めて分かる魅力だと感じました。
ベトナムの素材や香りを取り入れたカクテルが多く、料理の延長線として楽しめるのが特徴です。
「食事+バー」という流れが自然に組み込まれている点も、Anan Saigonが“体験型レストラン”と呼ばれる理由のひとつでしょう。
まとめ|ベトナム料理の「現在地」を知る一軒
Anan Saigonは、「ミシュランだから行く」というより、ホーチミンで今のベトナム料理を体感したい人に向いた店。「高級だから行くレストラン」ではありません。
ここは、ベトナム料理がこれまで培ってきた文化や味を土台に、次のフェーズへ進もうとしている姿を体感できる場所です。Anan Saigonは、そんな印象です。
・伝統を壊さず、更新する
・ローカルでありながら、世界基準
・派手さよりも、思想がある料理
ホーチミンで一軒だけ特別なレストランを選ぶなら、
Anan Saigonは間違いなく候補に入るはずです。
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