中国は“麺の大陸”。
地域によって小麦粉や米粉の配合、水の硬度、加水率、打ち方、スープやタレの作りまでまるで違い、同じ「ラーメン」という言葉では括れないほど多様です。福建の澄んだスープ麺から、重慶の痺れる辛麺、雲南の儀式のような米線、新疆の炒め麺まで──その土地の気候や食文化が一杯のどんぶりに凝縮されています。
この記事では、そんな麺料理大好きの筆者が中国各地のご当地ラーメン(麺料理)を11種類厳選。
麺のタイプや味の方向性、現地での注文のコツまで、旅好き・グルメ好きのためのガイドをお届けします。
ご当地麺料理11選
過橋米線(グオチャオミーシエン)|雲南
“橋を渡る米線”と呼ばれる雲南名物。鶏ガラと豚骨をじっくり煮込んだ熱々スープに、生の肉片や野菜、うずら卵、豆腐皮などをくぐらせて自分で仕上げるスタイル。麺はコシのある米線(ライスヌードル)で、スープがまろやかに絡む。昆明をはじめ雲南各地に専門店があり、具材の豊富さと儀式的な提供法が特徴。
新疆拉条子|ウイグル自治区
新疆ウイグル自治区の代表的な麺料理。手延べした太めの拉面をトマト・ラム肉・ピーマン・玉ねぎで炒め合わせた“炒め麺”。スパイスとトマトの酸味、ラムの香りが絶妙に融合し、中央アジアの風を感じさせる。地域によっては「炒麺」や「拌麺」スタイルでも提供される。
福建线面(福建細麺)|福建
線のように細い手延べ麺。かつおに似た乾物や牡蠣の旨みが効いた澄んだスープで、朝食にもぴったり。揚げネギの香りが印象的。
葱油面|上海
焦がし葱を移した香味油と醤油だれを絡めるだけの“シンプル・イズ・ベスト”な和え麺。見た目は地味でも、葱油の香ばしさが深く、上海人のソウルフード。
広東・雲吞麺(云吞面)|香港、広東
枧水(アルカリ水)を使った超細麺の弾力が特徴。透き通ったスープとぷりぷりの海老雲吞が絶妙なバランス。香港では層状に盛りつけ、麺が伸びないよう工夫されます。
腸旺麺(肠旺面)|貴州
豚ホルモンと血豆腐の“腸旺”が主役。花椒と酸味の効いた真っ赤なスープが刺激的。旨辛なのに後味すっきりで、地元では「二日酔いの救世麺」とも呼ばれます。
担仔麺(担仔面)|台湾 (台南)
台南発の屋台麺。海老だしスープに甘辛い肉燥(そぼろ)、にんにく、香菜。小ぶりな丼で提供され、軽めの“半湯(バンタン)”スタイルが特徴です。
重慶小面|重慶
四川料理のスピリットを詰め込んだ汁なし麻辣麺。辣油と花椒、芝麻醤、芽菜を合わせたタレに細麺を絡めます。辛さと香ばしさ、シビれの三重奏。
𰻞𰻞面(biángbiáng麺)|陝西
帯のように幅広い平打ち麺を、熱した油をジュッとかけて仕上げる“油泼”スタイル。黒酢と唐辛子が効いた豪快な味わい。名前の漢字の複雑さも有名。
麻酱面(マージャン麺)|北京
北京など北方で定番の和え麺。濃厚な胡麻ペーストに醤油ダレを合わせ、きゅうりの千切りで口直し。冷やしても美味しく、夏の昼食にぴったり。
沙茶麺|廈門
魚介やピーナツをベースにした沙茶醤(サーチャージャン)が主役。コクと香りの深さで、厦門や台湾南部では朝食の定番。豚モツや魚団子をトッピング。
中国麺の地域別早見表
上記で紹介した麺料理を表にまとめました。
| 麺名 | 地域 | 麺のタイプ | 味の方向性 | 辛さ目安 | 主な具材 |
|---|---|---|---|---|---|
| 福建线面(福建細麺) | 福建 | 極細手延べ麺 | 澄んだ出汁、あっさり | ★☆☆ | 牡蠣、魚団子、揚げネギ |
| 上海葱油面 | 上海 | 細〜中細 | 香味油ベース、醤油だれ | ☆☆☆ | 焦がし葱、青菜 |
| 雲吞麺(云吞面) | 広東・香港 | 超細かんすい麺 | 海老出汁の清湯 | ☆☆☆ | 雲吞、叉焼、青菜 |
| 腸旺麺(肠旺面) | 貴州 | 中細 | 酸辣×花椒、濃厚辛旨 | ★★★ | ホルモン、血豆腐 |
| 担仔麺(担仔面) | 台湾(台南) | 細麺 | 海老出汁+甘め肉燥 | ★☆☆ | 肉燥、海老、香菜 |
| 重慶小面 | 重慶 | 細〜中細 | 麻辣(シビ辛) | ★★★ | 花椒、辣油、芽菜 |
| 𰻞𰻞面(biángbiáng麺) | 陝西 | 幅広平打ち | 酸辣or油泼(熱油がけ) | ★★☆ | 唐辛子、黒酢、にんにく |
| 麻酱面(マージャン麺) | 北京ほか北方 | 中太 | 胡麻ペースト濃厚和え | ☆☆☆ | 胡麻だれ、きゅうり |
| 新疆拉条子(Lātiáozi) | 新疆 | 手延べ太麺 | トマト×ラム肉炒め | ★★☆ | ラム肉、トマト、ピーマン |
| 沙茶麺(サーチャー麺) | 福建南部・台湾 | 中細 | 沙茶醤ベース、魚介旨味 | ★☆☆〜★☆ | 魚団子、豚モツ |
| 過橋米線(Guò qiáo mǐxiàn) | 雲南 | 米麺 | 鶏ガラ+豚骨白湯 | ☆☆☆ | 鶏肉、うずら卵、豆腐皮 |
まとめ:中国ご当地麺料理は地域の歴史と気候を映す“食の地図”
同じ小麦でも、打ち方と調味の違いでまったく別の料理になる。
色々な麺料理を食べてきた中で、日本のラーメンがスープを主軸に発展したのに対し、中国は“麺とタレの調和”を追求してきたのではないかと思います。
同じ「麺」でも、地域や水、香辛料で表情が変わるのが中国の面白さ。旅先でその土地の麺を味わうことは、文化そのものを体感すること。あなたの“推しの一杯”を探す旅に出かけてみてください。













